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  • 第11回本フェチ大賞 表紙デザイン賞 「吉日花暦」真宮様[EatIn]

表紙デザイン賞
「吉日花暦」
真宮様[EatIn]

「OKフロート×空押し」の魅力が最大限に引き立つ!
四季の移ろいを感じさせる、優しさあふれるアンソロジー

使用オプション 特殊紙(OKフロート) / 空押し / 高精細箔押し(艶消し銀) / カラー口絵 / 遊び紙(桜ふぶきトレペ)

interview

※本インタビュー記事は、装丁を語る上で欠かせない「原作作品のストーリー」に触れる内容や「登場キャラクターへの解釈」を含みます。

真宮様に、今作品の誕生したきっかけや装丁の考え方、発行までのスケジュールをお伺いします!

まずは、今回のご本を作るきっかけを教えてください。

この本は、狛治さんと恋雪さんのふたりの、四季をテーマにしたアンソロジーです。

狛治さんと恋雪さんは本編では悲劇的な結末になってしまいましたが、共に生きた3年の間に、あたたかな愛をゆっくりと育んでいった時が間違いなく存在したのだと思います。
罪人で流れ者であった狛治さんと、身体が弱く先が短いと思われていた恋雪さんは、ふたりとも未来が見えない子ども同士でした。
しかし、生活を共にする中で、お互いの言葉や愛情に支えられ、共に将来を生きたいと思うふたりの男女に成長しました。
狛治さんが猗窩座という鬼になっても、ずっと心の奥に記憶されていたことや、姿は見えなくても恋雪さんがそばにいたことは、その深い愛の証に他ならないと思うのです。
短くとも、ふたりにとってはかけがえのない時が確かにあったことを残したいと思い、このたびアンソロジーを主催することを計画いたしました。

また、アンソロジーを作るにあたり、お互いを通して知る四季の美しさをテーマにしたいと思い、春夏秋冬のそれぞれでお話を募ることを決めました。たった3周しか廻らなかった季節の、何気ない日常の中に、ふたりの幸せを感じていただきたいと思いました。
タイトルの「吉日花暦」は、四季の花に彩られたふたりの吉き日をカレンダー(暦)のようにめくりたいという気持ちで命名しました。

使用された加工とその加工を選んだ理由があればおしえてください。

表紙デザインは、タイトルロゴそのものを二人の過ごした日々と捉え、その周りを四季の花々で囲み「吉日花暦」を表紙全体で表現しています。(デザイン担当より)

表紙用紙は「OKフロートホワイト 170kg」で、表1・表4に高精細箔による全面空押しを施しました。
線画ではなくその周囲を空押しすることで、エンボス加工のように仕上がるよう計画しました。線画はあたたかな雰囲気を持たせるため、主催がGペン・丸ペンを使ってすべてアナログで描き起こしたものを使用しました。
春夏秋冬それぞれの花をどう組み合わせるか、頭を悩ませながら配置した思い出があります。金木犀などの細かい線も大変綺麗に加工してくださり、緑陽社様には感謝しております。

また、表1のタイトルロゴと背表紙のタイトルに、高精細箔による艶消し銀の箔押しをしました。艶消し銀を選んだ理由として、優しい銀の光で彼女の名前の一部であり、鬼となった彼が背負う「雪」から連想して組み込みました。(デザイン担当より)

彩色はフルカラーではなく、DIC2158/DIC2009の特色指定で2色刷をしました。ふたりのテーマカラーである桃色と水色が、じんわり滲んで混ざり合うように申し送りました。

また、桜吹雪の遊び紙(桜ふぶきトレペ52kg)を挟み込み、四季アンソロジーの幕開けにふさわしい春の雰囲気を演出いたしました。

今回のご本はどのようなスケジュールで進められましたか?

2020年10月:アンソロジー企画立ち上げ
2020年11月:執筆者へ声かけ、公募発表、装丁を相談し印刷スケジュールを計画
2020年12月:公募〆切、執筆メンバー決定、原稿提出〆切日程決定
2021年1月:アンソロ詳細とタイトルロゴ公開、4か月前カウントダウン絵公開
2021年2月:表紙絵の作成・装丁決定・見積依頼、フライヤー作成、執筆メンバー公開、3か月前カウントダウン絵公開、全体の装丁について緑陽社様と相談を重ねる、主催自身の原稿を始める
2021年3月:提出原稿の校正、イベントにてフライヤー配布、2か月前カウントダウン絵公開、表紙や装丁・ページ数などの情報を公開、表紙入稿
2021年4月:ノベルティデータの入稿、口絵・本文の入稿、書店委託申し込み、1か月前カウントダウン絵公開、感染症対策について打ち合わせ、通販情報公開、執筆者紹介とサンプル公開をカウントダウンで毎日更新
2021年5月:執筆者に献本送付、0か月前カウントダウン絵公開、感染症対策について情報公開、イベントにてアンソロ頒布、通販手配

今回のご本のような装丁で同人誌を作ってみたい!とお考えの方に向けてメッセージをお願いします。

緑陽社様に「このような加工をしたい」と相談させていただいた際、当初予定していた紙では加工が難しいことなどを細かくご確認くださいました。
また、空押しが可能な線の細さかどうかも判断が難しく、デザイン担当と共に何度も打ち合わせを重ねました。
紙も加工も、候補をいくつか立てておき、「これをしたい」という自分の優先順位を明確にして相談に望まれるのがいいと思います。

最後にひとことお願いします!

このたびは栄えある賞を頂戴し、大変嬉しく思っております。
過ぎてみれば一瞬だった、充実していた半年間をゆっくりと噛み締めながら思い出しました。
既に完売しているにもかかわらず、こうした機会を頂き、多くの方に大切に思っていただけるアンソロジーの制作に携われたことは、私の生涯の宝物です。
緑陽社様をはじめ、関わってくださった皆さまに感謝申し上げます。

Staff Comment

巡る四季を連想させる花々や、こだわりの特色インキの色あいが可愛らしい表紙です。

OKフロートの柔らかな雰囲気と、艶消し銀箔の凜とした輝きの対比が印象的。線画の周囲を空押しすることで、花が浮き上がったように仕上げるアイディアが素晴らしく、目で見て、そして手で触れて楽しめる一冊となっています。

巻頭の「桜ふぶきトレペ」や、扉ページに添えられた可憐な花々のイラストも素敵です。
二人がともに過ごした幸せな日々を、本の装丁として丁寧に具現化された、魅力いっぱいのアンソロジーです。

▼ 第11回 受賞作品 ▼


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