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準大賞
「10 years later」
ハル犬様[くろいぬ本舗]
interview
ハル犬様に、今作品の誕生したきっかけや装丁の考え方、
発行までのスケジュールをお伺いします!
まずは、今回のご本を作るきっかけを教えてください。
原作のゲームが公開10周年を迎えたため、そのお祝いの気持ちを込めて、
「各マルチエンディングからの『10年後』」をテーマにしたアンソロジーを企画しました。
また、10周年という大きな節目のお祝いでしたので、
大きな作品愛を込めた内容・装丁にしたいと思っていました。
使用された加工とその加工を選んだ理由があればおしえてください。
「原作の世界観」「マルチエンディングの魅力」に加え、
「10年の時間経過」と「お祝い感」を本でどう表現できるかを考えました。
どこか懐かしい感じの風合い・手触りの特殊紙OKフロートは
原作の世界観にも合い、マルチエンドの表現に最適でした。
表紙キャラクターの1人を高精細箔で空押しし、
表表紙では、空押しによる浮き出したような見た目と質感で
「実は2人が別のエンディングの世界線にいる」雰囲気を、
めくった表2では透けた空押し部分で静かに眠る姿を映し出し、
バッドエンドへの分岐を示唆しています。
トレペ扉では楽しそうな主人公たちの様子を描くことで、
トレペをめくって現れる「10年後の誰もいない舞台」を表現しました。
金の箔押しは、お祝いの雰囲気を出すことと、読後に原作中の蝶々に見送られる余韻を
表現したい意図で施しています。
また、エンディングごとに章を分けて楽しめる構成にしたかったため、
各エンディングのカラーイラストも本文中へ差し込み、
それぞれの章に、エンディングタイトルとその解説を入れた扉を設置しています。
執筆者様から頂いた作品解説と原作への思いは各作品の直後に掲載し、
総じて、1つ1つの作品や原作の一面を、より深く楽しめる一冊にしました。
今回のご本はどのようなスケジュールで進められましたか?
5月:企画内容・サイズやページ数の概要決定
6~7月:執筆者様へのお声がけ・担当テーマ決定
8~9月:特殊装丁に関する資料・情報の収集
10月:緑陽社様へのお見積り依頼(初回)
11月:緑陽社様とのオンラインなんでも相談室(装丁について)
12月:装丁決定/最終見積、ご寄稿原稿受領
1月:表紙、扉、目次などの完成、発注
2月:納品
今回のご本のような装丁で同人誌を作ってみたい!とお考えの方に向けて
メッセージをお願いします。
「装丁の工夫で表現できる尊さ」をこの本で実感できたので、
気になる装丁を可能な範囲で試すことは、とても楽しいと思います。
今回初めて利用する装丁オプションばかりで不安もありましたが、
利用例を具体的な本で見せて頂いたり、予算内で可能な装丁や
表現手段について知れたのは、緑陽社様のオンライン相談のおかげでした。
これだ!とピンとくる装丁が閃いた時は本当に嬉しかったので、
装丁に悩まれている方は、ぜひお勧めします。
この本の装丁でも、もしご参考になる部分があれば嬉しく思います。
最後にひとことお願いします!
この度は光栄な賞を頂き、誠にありがとうございました。
原作のリメイク版や新たな公式グッズも公開され、舞い上がっていた
タイミングでの受賞のお知らせで、さらに舞い上がりました。笑
この装丁に至ったのは執筆者の皆様の素敵な作品があってこそでしたので、
まず筆者の皆さまに嬉しいお知らせができることを、大変嬉しく思います。
そして原作の一ファンとして、祝10周年という時期にこの本が祝福を受けられることを、
ありがたく、また幸せに思います。
装丁相談や度々のお見積りにご対応下さった緑陽社様に、改めて感謝申し上げます。
本にする形での表現の幅を、楽しみ、実感することができ、とても嬉しかったです。
この度はありがとうございました。
Staff Comment
選択肢を選ぶごとに移り変わる「ゲームの世界」を本という媒体で見事に表現した一冊です。熱を加えることで紙の色味が変化する特殊紙「OKフロート」を表紙に使用し、
表紙の男性キャラクターに重なるように加熱型押し(空押し)が施されています。
表紙裏(表2)は印刷ではなく、加熱による紙の変色が裏面に透けることで描かれているという驚きのアイディア!目をとじたキャラクターのデザインは、加熱型押しで表現できるギリギリのラインをつきつめました。
くっきり線画が見えるよう、あえて斤量の薄い「OKフロート120kg」を選択するなど細部にまで検討を重ね、見事に功を奏しています。
トレペ扉をめくると時が経過する巻頭ページ。エンディング毎に挟みこまれる美麗なカラー口絵。物語が終わると、裏表紙にも金の箔押しで蝶々がちらり。
本をとじる瞬間までこだわりぬいた一冊を読み終わると、10年という歳月と作品世界の未来に誰もが思いを馳せることでしょう。
▼ 第11回 受賞作品 ▼