- 第11回本フェチ大賞 特別賞 「はたらくマイキャラのアンソロジー」新橋マル様[マル3]
特別賞
「はたらくマイキャラのアンソロジー」
新橋マル様[マル3]
interview
新橋マル様に、今作品の誕生したきっかけや装丁の考え方、
発行までのスケジュールをお伺いします!
まずは、今回のご本を作るきっかけを教えてください。
当アンソロジーの舞台は、冒険者として旅するMMORPGです。自分のキャラクター=マイキャラを登場させる二次創作において、冒険者をはじめさまざまな職業のマイキャラさんが活躍されています。その中でも、冒険者をサポートする職業…冒険者を癒やし、必要とされるものをつくり、ときにはプロの技でおもてなしする、そんな「はたらく」ひとたちの日常を集めた同人誌が読みたいと思い、企画制作をさせていただきました。
アンソロジーを制作するのは初めてで緊張しましたが、厚い本の装丁にチャレンジできるかも!と企画当初からとても楽しみでした。
使用された加工とその加工を選んだ理由があればおしえてください。
NEONカラーを使用する都合で、表紙の紙はデフォルトのハイマッキンレーポストです。
本文用紙はコミックルンバクリーム・ピンク・ブルーの3種を使用しました。加工に関しては、表紙にNEONカラーとホログラムPPイリディセントを使用し、トレペ×1色刷扉を追加しています。
表紙は本の第一印象を決定づけるところですので、コンセプトを伝えることを第一目的としています。
ホログラムPPイリディセントで「職の多様性や各キャラクターの様々な思想」を、NEONカラー・プルートレッドで「人との関わりと情熱」を表現しました。
この2つの加工でキャラクターの姿をあざやかに染め上げることにより、コンセプトである「はたらく」に関わるポジティブな感情を読者の皆様にイメージしていただきたいと考えました。
そして、表紙をめくった扉には「ヒーローは、冒険者だけじゃない」というキャッチコピーを配置。
トレペで街のイラストを透かし、暮らしを舞台にした作品が集まっていることをアピールしています。
本文に関しては、ボリュームを考慮し「読みやすさ」を意識したデザインを心がけました。
25作品それぞれの職業を3ジャンルに分類した上、本文紙替で3色に区分けし、長時間読み続けてもメリハリを感じる工夫をしています。
また、作品単位でガラッとテーマが変わりますので、各話の先頭に扉ページを挿入し話の区切りを意識して読み進められるようにする、扉の裏に簡単なキャラクター紹介をはさむなど、それぞれの話を楽しんでいただけるような編集を意識しました。
今回のご本はどのようなスケジュールで進められましたか?
アンソロジーは皆さまの原稿が主役の本だと考え、原稿拝受後に装丁の最終決定をするつもりで進行しました。
具体的には、原稿締切の2週間後に装丁決定/表紙入稿、その2週間後に本文入稿を行うスケジュールで進めました。
しかし、装丁検討期間に年末年始を挟んだこともあり、あまり余裕がないスケジュールでしたね……。
冬コミ納品直前の緑陽社さまに個別見積をお願いするなど、いろいろ無理をお願いしてしまいました。快くご対応くださったご担当者さまには、本当に感謝しています。
ただ、装丁の最終決定を原稿拝受後に行ったのは正解だったと思っています。
皆さまの作品を読ませていただく中で、このアンソロジーに集まった作品共通の特徴を理解したのです。
原作の世界を舞台にした様々な「はたらく」作品たち、そこに詰まっていたのは「仕事を通じて人とつながる気持ち」でした。
原作世界のヒーローは冒険者ですが、この本に集まったキャラクターたちの仕事に触れた人々にとっては、きっと彼らこそがヒーローなんだ。そう気づいたときに、キャッチコピーと装丁イメージがするすると決定しました。デザインをしていて一番気持ちがいい瞬間ですね!
インスピレーションを得ることができたのは、執筆者の皆さまの素敵な作品があってこそでした。この場を借りて、改めて執筆者の皆さまに感謝申し上げます。
今回のご本のような装丁で同人誌を作ってみたい!とお考えの方に向けてメッセージをお願いします。
NEONカラーは発色が抜群にキレイです!
特色の良さを存分に味わうことができますので、ぜひ皆さまもサンプルでご確認ください。
新色のペルセフォネグリーンは、他社さんではあまり見かけない蛍光色ですね。好きな色味なので、私もはやくサンプルを取り寄せてみたいです。
そしてNEONカラーは広い面積で使用するのが効果的だと思います。今回は思い切って全面に重ねてみましたが、とてもインパクトが出て気に入っています!
ただし全面加工にする場合、4C版と重ねたときの色の出具合がぶっつけ本番になるのが怖いところでもありますね。
サンプルの隅にある色見本と見比べながら、調整をされることをオススメします。
また、ホログラムPPイリディセントはとても使いやすいホログラムPPだと感じました。
柄が入っていないぶん仕上がりイメージが想像しやすいですし、表紙の絵柄を最大限に活かしながら虹色の輝きを付与できるのが魅力的です。
小さめの判型だったり絵柄が細かったりする場合は、このPPを使うととてもバランスが取りやすいと思います。
緑陽社さまは加工の種類が豊富ですし、何を使おうか悩んでしまいますよね。
「これを読者さんに伝えたい!」というポイントを一番素敵に伝えられる加工はなんだろう?と考えると、決めやすいかもしれません。
ぜひ、余裕のあるスケジュールを組んだ上でいろいろ検討してみてください!
最後にひとことお願いします!
私は、装丁デザインは「モノ」のデザインに近いものだと考えています。
手触り、紙質、加工によるアクセント…様々な要素で「これがどういう本なのか」「どんな体験ができるのか」を読者さんに想像させ、期待させるのが装丁デザインの役割だと思いますし、そんな本づくりをしたいなと思っています。
今回初めて緑陽社さまに印刷加工をお願いしましたが、さまざまな希望を聞いてくださる、
仕上がりも噂通りのクオリティなど…思い描いたイメージを実現していただけるサービスが
たくさんで、お願いして本当によかったです。
すてきな賞を頂戴し、とても光栄に思います。ありがとうございました。
Staff Comment
NEONカラー+イリディセントPP表紙のインパクトに一気に惹き込まれます!公開間もない新オプションを使いこなす手腕に弊社スタッフ一同舌を巻きました。
たくさんの「マイ」キャラクターがぎゅっとつまった表紙は、鮮やかなNEONカラー・プルートレッドの色味によって統一され、洗練された「プロフェッショナル」を演出しています。
職種によって本文を色分けするアイディアも、まさにお仕事のパンフレットのようで脱帽です。
トレペ扉に記される「ヒーローは冒険者だけじゃない」のキャッチコピーを体現するかのような、意欲的な作品です。
▼ 第11回 受賞作品 ▼