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紙フェチ賞
「eleven」
神永さえる様[ひつじかい]、イラスト:zouroku様
【表紙】 | 用紙:かぐや ねまち 170kg/印刷:1色刷り(ゴールド青口)/加工:トムソン加工 |
【扉】 | 用紙:かぐや 十三夜 90kg/印刷:1色刷り(ゴールド赤口)/加工:空押し |
【本文】 | 用紙:コミックルンバ クリーム 84kg/印刷:スミ刷り |
【製本】 | 無線とじ |
【加工】 | スピン(紐しおり) |
Interview
神永さえる様に、今作品の誕生したきっかけや装丁の考え方、
発行までのスケジュールをお伺いします!
まずは、今回のご本を作るきっかけを教えてください。
好きなキャラクターのイベントが開かれるということで、なにか特別なことをしたいなと思い、 今まで自分が出した本の再録本を作ろうと思いました。 せっかくなら変わったことをしたいな、と考えたのが始まりです。
使用された加工とその加工を選んだ理由があればおしえてください。
今回いただいた賞が『紙フェチ賞』ということで、その名の通り紙は特にこだわりました。 表紙と遊び紙に使った『かぐや』は、月のクレーターのような凹凸がありそれだけで存在感があるのであまり装飾を入れず、紙をメインにしたデザインを意識しています。
表紙中央にトムソン加工で丸く穴をあけているのですが、できるだけ大きい穴にしたかったので 緑陽社様に「できるギリギリを攻めてほしい」とお願いしました。 普通に置いたときは下の黄色いかぐやの紙が見えることで満月のように、 本を開いた時には、何もなくなって新月のように見えるといいな、と狙って作りました。
中の遊び紙も『かぐや』を使って、ここには空押し加工をしてもらいました。 メインのキャラと絡むキャラが10人いたので、そのキャラが履いてそうだな、という靴を思い浮かべながら、 大きさや配置を調整してして10人分の足跡を空押しで入れています。 月に降り立ったキャラが付けた足跡…というイメージです。 細かすぎてつぶれるかなとも思ったのですがきれいに再現されていて、とても嬉しかったです。
その他、『キャラが宇宙遊泳してるように見えないかな』とスピンにチャームを自分でつけることもしました。
今回の本のメインキャラクターの名前に入っている『月』をとにかく意識して、月にまつわる色々なことを調べて、装丁に組み込みました。
今回のご本はどのようなスケジュールで進められましたか?
7月下旬のイベント合わせだったのですが
・5月の下旬見積もり依頼→直接緑陽社様に伺って装丁の相談
・6月頭に仕様確定→すぐ表紙入稿
・6月中旬本文入稿
と、かなりギリギリのスケジュールでした。
どうしても装丁が思いつかず何か月も悩んだのと、
使ってみたい紙を見つけたものの、問い合わせをするのが苦手で『それができるかどうか』の相談をするのに時間がかかってしまい…。
緑陽社の方はとても優しく丁寧に対応していただいたので
勇気を出してもっと早く問い合わせをすればよかったなと、反省しています。
今回のご本のような装丁で同人誌を作ってみたい!とお考えの方に向けて
メッセージをお願いします。
紙もいろんな種類があって、印刷所さんで取り扱っている以外の紙が世の中にはたくさんあるな、と今回色々調べて思いました。
「こういう紙を使いたいけど、取り扱いがない、本に使えるかがわからない」と思ったらすぐ問い合わせをするのが一番です!
あと、やりたい装丁が予算内で収まらないこともあると思います。
その時はあきらめる前に「もしかしたらこの部分は自分で手を加えればできるのでは?」
と考えてみるのも一つの手かな、と思ってます。
最後にひとことお願いします!
いつも装丁を考える時に参考にしていたページに自分の本が掲載されるなんて
本当に不思議で、今でもまだ信じられません。
とても嬉しく、光栄に思っています。ありがとうございました!
今回私が使った紙『かぐや』はとても面白い紙なので、月が推しの名前に入っていたり、月にまつわる作品の本やチラシを作ろう!
と思った時には、作例が見たいので是非使ってみてもらえたら嬉しいです!
Staff Comment
表紙と扉に使われた特殊紙「かぐや」、そして大きく丸いトムソン加工によって『月』というコンセプトが直感的に伝わってきました。 表紙は「ゴールド青口」、扉は「ゴールド赤口」で印刷し、スピンは「銀ネズ」を使用しています。まるで月光に照らされたかのような、柔らかな光沢感がオシャレです。 スピンの先に添えられたチャームはひとつひとつ作家様のお手元にてお付けいただきました。 可愛いキャラクターと手仕事の温もりが相まって、ほっこりした気持ちにさせてくれます。 巻頭扉の下部には足跡の空押しが! さらに本文をパラパラとめくっていくと、ノンブルの近くにある月の絵柄が満ち欠けします。 外側から見えない部分まで細やかな仕掛けがあり、装丁へのこだわりを感じました。 さまざまな加工の要素がありながらも統一感があり、洗練された仕上りになっているのは、一貫して『月』というテーマを軸にして熟慮された結果です。 特殊紙「かぐや」の特徴と魅力を最大限に活かしたこの作品に「紙フェチ賞」を贈呈させていただきます。▼ 第12回 受賞作品 ▼