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大賞
「Mon tresor」
ソーダ最中様[甘味処想田庵] デザイン:ヤスミヤ様
【表紙】 | 用紙:きらびき 白 HG-135/印刷:スミ(トンボの印刷のみ) |
加工:高精細箔押し(金、シルキーアイスグリーン) | |
【見返し】 | フレンチマーブル ローズ 120kg |
【遊び紙】 | シープスキン 白 80kg |
【口絵】 | 用紙:ヴァンヌーボV-FS スノーホワイト105kg/印刷:4色フルカラー/巻頭、巻末 |
【本文】 | 用紙:コミックルンバ ナチュラル 70.5kg/印刷:スミ刷り |
【製本】 | 上製本/丸背/ホローバック/花布:朱色/スピン:オレンジ |
Interview
ソーダ最中様、ヤスミヤ様に、今作品の誕生したきっかけや装丁の考え方、
発行までのスケジュールをお伺いします!
今回のご本が生まれたきっかけは何でしょうか?
原作が最終章に突入し、ある時衝撃的な出来事が起こったため、祈るような気持ちでアンソロジーを作りました。
アンソロジーのテーマは「宝物」で、物語のキーアイテムから着想を得ています。
テーマにふさわしい装丁には上製本&全面箔しかないと思いプルスウルトラしました!
使用された紙・加工と、特にこだわりを持った部分があれば教えてください。
【装丁のテーマ】
装丁のテーマは「お菓子の缶箱」です。
「宝物」は人それぞれ持つイメージが異なるため装丁のテーマに悩みましたが、最終的に美術館のように絵を飾る「額縁」と、幼い頃の大事なもの入れのような「クッキー缶」を組み合わせた形になりました。
表紙は、物語の始まりである「桜」と二人の大事なものである「キャラクターカード」をモチーフにデザインいただいております。懐かしさと繊細さを感じる素晴らしいデザインは、今回もデザイナーのヤスミヤ様にお願いしました。
【キャラクターのイメージカラー】
二人のイメージカラーである「グリーン」と「オレンジ」を箔色や見返し、花布、スピンに使用しています。
紙や箔色は完成した表紙デザインを頂戴してから、そのデザインを一番活かせると思った組み合わせで決めました。(白色で上品な輝きをもつ「きらびき(ほそぎぬ)」、柔らかさと繊細さを合わせもつ「シルキーアイスグリーン」、全体的な印象を引き締める「金色」。)
【箔推(押)しの輝き】
表紙に「きらびき(ほそぎぬ)」を使用し、「金色」と「シルキーアイスグリーン」の二色の箔押しで推しの輝きを物理的に表現しています。
「きらびき(ほそぎぬ)」は初めて作ったアンソロジーにも使用した紙だったので思い入れが強く、また箔押しした時の紙の模様の出方などもあらかじめ分かっていたため、完成イメージがしやすかったです。
【本の開きやすさ】
分厚い本のため、通常は見えづらくなるノド部分の絵柄まで余すことなく見たかったので、開きやすさには特にこだわって上製本にしました。
過去に作ったアンソロジー三冊も開きやすさ重視のためPUR製本やB5サイズで作ったりしていたのですが、今回の上製本が今までで一番開いている気がします。
【本そのものをお菓子の缶箱に見立てる】
缶箱の蓋に見立てた表紙を開けると、見返しにはタイトルのフランス語からイメージした大理石のような「フレンチマーブル(ローズ)」、遊び紙には透け感がある「シープスキン」、そしてカラー口絵「ヴァンヌーボV-FSスノーホワイト」の流れにすることで、缶箱の蓋を開けて包み紙を開いていくような装丁となっています。
また、本を閉じる際も口絵、遊び紙、見返しという開く時と正反対の流れにすることで、宝物をもう一度箱にしまうという感覚で本を閉じれたらと考えました。
ハードカバーなので、本を閉じる時に「ぱたん…」と音がするのがお気に入りです。
今回のご本はどのようなスケジュールで進められましたか?
最初の見積の際に、やりたい加工や仕様を全部盛り込んだ内容で依頼し、それを叩き台として実現可能な範囲で装丁内容やスケジュールを組み立てていきました。
12月の新刊カードで開催されるイベントに合わせ、有志企画(WEBオンリー・ペーパーラリー)と連動させた一年かけての企画となりました。
1月…アンソロジーを思い立ち、企画参加へのお誘いメールを送る。
2月…装丁の方向性を考えたり紙見本を通販でお取り寄せしたりする。緑陽社様へ最初の見積依頼をする。
3月…参加者様確定。企画告知フライヤーをデザイナー様に依頼する。(6、10月イベント会場で配布)
4月…二回目の見積依頼をし、その内容を踏まえたオンライン相談の予約を入れる。
5月…オンライン相談、上製本の資料をお借りする。
6月…上製本で決意が固まったため、デザイナー様に依頼する内容を考える。
7月…仕様がほぼ確定し、表紙諸々のトータルデザインを依頼する。
8月…参加者様へページ数・左右始まりを伺い、全体のページ数を概算し背幅を確定させた後、表紙を納品いただく。
9月…原稿提出~編集作業
10月…ページ数・仕様確定、表紙及び口絵入稿。
11月…本文入稿確定、通販予約開始。
12月…イベント会場へアンソロジー納品。お疲れ様でした
今回のご本のような装丁で同人誌を作ってみたい!とお考えの方に向けて
メッセージをお願いします。
同人誌を作り始めてからずっと、いつかは上製本で出してみたいと思っていたので、今回満を持しての装丁となりました。
予算やスケジュール諸々ハードルはあったのですが、それでも上製本への憧れは止められなかったんです。完成品を手にしたときはあまりの美しさに思わず本を抱きしめてしまいました。
上製本、最高です!
【ヤスミヤ様コメント】
今回は金箔とシルキーアイスグリーン箔をかけあわせたデザインで、箔同士がややシビアに隣り合う部分や細かな文字もあったので難しかったと思うのですが、緑陽社様は製本技術が高く、特殊加工がいつも本当に綺麗なので安心してお任せできました。
上製本としての仕上がりも素晴らしく、高級感と特別感が溢れる製本でデザインを一層素敵にして頂きました。
最後にひとことお願いします!
本フェチ大賞のページを見ると、アイデアや勇気、そしてたくさんのワクワクをもらえます。
三本のスピンで辮髪を表現した『中』の作品を見て「同人誌って自由なんだ!」と視界が開けました。
全ページ箔押しの『ライアニア受難譚』の作者様コメントを読んで箔押しへの情熱に感銘を受けました。
自分の本もこのような素晴らしい作品群の中に加えて頂けること大変嬉しく思います。
執筆者様、デザイナーのヤスミヤ様、応援いただいた皆様方、本当にありがとうございました。
そして緑陽社様、いつも美しく印刷・製本してくださり、また私の「こんな本を作りたい!」という気持ちに寄り添ってくださりありがとうございます。
この本がまさに「私の宝物」になりました!
【ヤスミヤ様コメント】
こちらのデザインをご依頼くださったソーダ最中様にはいつも面白く素敵なご依頼を頂き、その度に緑陽社様に印刷をお任せし素敵な仕上がりにして頂いておりました。
今回のテーマは「宝物」だったのですが、上品に輝く仕上がりがまさに宝物でした。
緑陽社様のもとで日々沢山の素敵な装丁が生み出されている中、
大賞を頂けたこと幸甚の至りです。
素晴らしい機会を頂きましたこと、ソーダ最中様と緑陽社様へ心よりお礼申し上げます。
Staff Comment
仕様のご相談をいただいたとき、まさに「宝物」を連想する素敵な装丁でしたので「完成したらどんなに素敵な本になるのだろう」と、とてもワクワクしておりました。
用紙、箔材をはじめ、花布やスピンも丁寧に選定いただき、
このアンソロジーのテーマがしっかりと体現された一冊となっています。
どこから見ても美しく、手元にあるだけで幸せな気持ちにさせてくれます。
本格仕様の上製本はがっしりとしたイメージがありますが、
こちらの冊子は背が「丸背」で可愛らしさもあり、また貼り表紙の「きらびき 白 HG-135」の淡い光沢がとても上品です。
デザインの可愛らしさと上製本の重厚感が美しく調和したこちらの本に「大賞」を贈らせていただきます。
過去には、第10回本フェチ大賞にて「審査員賞」を受賞されておりますので、こちらもあわせてお楽しみください。
特別紹介
ソーダ最中様は、今回の受賞作品「Mon tresor」以外にも意匠にこだわった作品を
数多くご発行されています。
今回、ご厚意により「荒事、大事、出勝事。」「Heroes don’t cry.」の2作品も、
こちらのページでご紹介させていただきます
「荒事、大事、出勝事。」
【カバー】 | 用紙:色上質 特厚口 黒/印刷:2色刷り(ゴールド青口、シルバー) |
加工:マットPP、高精細箔押し(ホログラム箔アクア) | |
【表紙】 | 用紙:きらびき HG-180/印刷:4色フルカラー |
【見返し】 | ①タント V-55(オレンジ)70kg ②タント V-65(緑)70kg 前後色替え |
【口絵】 | 用紙:ヴァンヌーボV-FS スノーホワイト105kg/印刷:4色フルカラー/巻頭 |
【本文】 | 用紙:コミックルンバ ナチュラル 70.5kg/印刷:スミ刷り |
【製本】 | PUR製本 |
《Staff Comment》
カバーの「ホログラム箔アクア」が、袖の折り返し部分まで含めて全面に散りばめられています。
デザインの美しさはもちろんのこと、箔が剥がれやすい背や袖の折り目部分をうまく避けつつ、違和感ない配置になっているのがお見事です。
カバーを外すと現れるカラー表紙にはパール光沢のエンボス紙「きらびき」が使用されています。
見返しは巻頭と巻末で「タント」の色違いになっています。キャラクターをイメージして選定いただいたものです。
キャラクターのカラーと、歌舞伎風のデザインがマッチしたオシャレな御本は、開きやすいPUR製本で読みやすさにもこだわって丁寧に作られています。
「Heroes don’t cry.」
【帯】 | 用紙:ハイマッキンレーアート 135kg/印刷:4色フルカラー/加工:マットPP |
【カバー】 | 用紙:OKフロート ホワイト 120kg/印刷:4色フルカラー |
加工:高精細箔押し(透明ホロ箔グラム箔ジュエリー、加熱型押し) | |
【表紙】 | 用紙:ヴァンヌーボV-FS スノーホワイト 195kg/印刷:4色フルカラー |
加工:箔押し(パール) | |
【見返し】 | レザック82ろうけつ 白 130kg |
【扉】 | 用紙:クラシコトレーシング 52kg ホワイト/印刷:1色刷り(グレー)/巻頭、巻末 |
【口絵】 | 用紙:ヴァンヌーボV-FS スノーホワイト105kg/印刷:4色フルカラー |
【本文】 | 用紙:コミックルンバ ナチュラル 70.5kg/印刷:スミ刷り |
【製本】 | PUR製本 |
《Staff Comment》
カバーも帯も見返しもトレペ扉も口絵も、全ての紙を見て、触れて、読んで、そして裏側からもじっくり見ていただきたい作品です。
特に、カバー表4側に施された空押し(加熱型押し)を裏側から見ると…!作品全体のテーマとなっている雨や涙の表現がとてもエモく、心を震わされます。
見返しの「レザック82ろうけつ 白」は、伝統的な「ろうけつ染め」をイメージした特殊紙です。透け感と、凹凸ある独自の模様が魅力的な、他にない個性を持った紙です。
サラリとした手触りの「ヴァンヌーボV」の表紙と対照的な質感が、この一冊の中で良いアクセントになっています。
さまざまな装丁の工夫から生み出されている透明な空気感が素晴らしいこちらの作品も、読みやすいPUR製本です。
▼ 第13回 受賞作品 ▼